洛色~RAKUIRO~
京都は色の数が多い街。
街を包む木々や山々、たおやかに流れる川、四季折々にやさしく咲く花々。
街中にも、明暗を伴って様々な色を見つけることができます。
そして、祭りや儀式の装飾や装束。お菓子やお料理の美しさにも目がほころびます。
わたしたちは、そんな京都を「色」で表現しました。
色彩だけでなく、場所や物・事を表す「色の名」を付けました。
古典に描かれた情景、背景や由来を説明として加え、それぞれの色の物語を描きました。
古の都人も、現代のわたしたちも、同じ場所で同じ情景を見ている。
そんな楽しみ方を、品々に込めてお届けします。
品々をお使いになる方の「思い出の情景」と重ねて、
京都の色「洛色」をお愉しみください。
薄暮の慕ふ
はくぼのしたう
「日暮るれば山の端出る夕づゝの星とは見れどはるけきやなぞ」
薄暮の頃、鴨の河原から、濃青に染まる西の空を望めば、そこには宵の明星がまたたく。
恋しい人を想い、同じ場所で語り合った頃を思い出す。
花街の石畳
かがいのいしだたみ
京の花街は、雨上がりが美しい。
濡れた石畳に映える灯火に色濃い風情を感じて。
路地入ル
ろじいる
京の碁盤の目は、丸竹夷二御池、姉三六角蛸錦、四稜仏高、松万五条。
お目当ての通りを上ル下ル。
ふと横へ逸れて、路地を一本入れば不意に出会う暗がり。
また異なる表情を見せてくれる楽しみ。
京の底冷え
きょうのそこびえ
京の冬は厳しくも、寒さの中で育つ京野菜は滋味が増す。
恵みをもたらす大寒の色。
すんずり川床
すんずりかわゆか
川風を感じて食を味わう、河原の涼み。
「すゞしさや都を堅に流れ川(与謝蕪村)」
涼を表す「すんずり」という表現が似合う色。
夕照の塔
ゆうしょうのとう
教王の護国寺の五重塔の影像は、京の象徴。
車窓から東寺が見えれば、京都へ帰ったきたことの安堵に心落ち着く。
夕刻を過ぎて、塔の輪郭はいっそう際立って見える。
空海の開いた密教空間に、色濃き影を縁取って。
雲母の京唐紙
きらのきょうからかみ
伝統の技である唐紙工芸。
和紙に雲母や絵の具を用い、手摺りで生み出す美しい文様は、都ならではの優美。
鳥の子紙のなめらかな薄黄色に心休まる。
翠緑の古寺
すいりょくのこじ
天鵞絨(ビロード)のような柔らかな表情の苔は、翡翠のような美しさ。
古寺の鬱蒼とした翠緑の苔庭は、悠久の静謐空間。
君が代にも描かれる「苔むす」という言葉は、生むことを重ねて未来永劫発展し続けるという意味だそう。
琥珀の街角
こはくのまちかど
秋の暮れ、街々の銀杏の葉が落ち、さながら黄金の絨毯。
銀杏の並木路は小雪の頃、琥珀色に染まり、冬の訪れを感じさせる。
京都御苑・凝華洞跡の大銀杏は圧巻。
蘇芳の水鏡
すおうのみずかがみ
「蘇芳」とは、古代、最高位の紫に次ぐ上位の色。
晩秋の頃、京都の紅葉名所には、池の水鏡に映る「夢幻の美」を求めて人々は集い、
見惚れる。柔らかくも艶のある高貴の深紅。
水鏡は、永観堂、醍醐寺、高台寺、東寺が絶景。
とこしえの橘
とこしえのたちばな
京都御所「紫宸殿」前庭に植えられている「右近の橘」は永遠の象徴。
「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする(よみ人しらず)」
五月を待って花開く橘の花の香りをかぐと、昔親しんだ人のなつかしい袖の香りがする。
平安の都人は、橘の花の香りに似た香をたきしめていたそう。